著者
青木 義勇
出版者
日本ハンセン病学会
雑誌
レプラ (ISSN:00241008)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.55-72,117, 1932

結核菌は酸素含有量の大な肺臓に,癩菌は同含有量の小な皮膚及び粘膜内に共の主臓器親和性を有する事は衆知の事實であつて,又同じく結核菌と雖も人型,牛型,鳥型,冷血動物結核菌間に共の差異ある事も否む事は出來ない。然るが故に抗酸性菌の各々は其發育に際し酸素を必ずしも同一の張力で要求しないといふ想像は強ち無根の推定ではあるまい。<br>著者は各種抗酸性菌16株(人型,牛型,鳥型,蛙各結核菌,BCG,ケドロウスキー氏,クレーグ氏,渡邊氏各所謂癩菌,著者が昭和6年春古木某男癩結節より分離せる抗酸性菌,鼠癩菌,チモテー菌,恥垢菌等の各原株及び近時共原株との生物學的性状,毒力の差異によつて興味を持たれて居る解離せられた所謂S型結核菌,BCG,チモテー菌)を選び,ハーリス氏法に從ひ培養試験管内に種々の張力(50mm, 100mm, 150mm,……1氣壓)の酸素を封入し,發育を觀察し同時に集落形成,菌體變形,抗酸性度の變化等を参考とし,共發育に必要な張力の限界を決定した。(菌株の來歴,各菌株の發育に最適な培地の撰定,ハーリス氏酸素封入装置及操作,抗酸性度測定法及び成績等詳細に独文原著参照)