著者
飯野 宏
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.389-397, 1967-04-01

所謂精子免疫による女性不妊の研究の一環として,抗原を雌動物に経腟経路で投与した場合にみられる現象を検討した.即ち,モルモツト睾丸乳剤を用いこれを雌モルモツト性器内に注入して経腟免疫が可能であるか否かを検べ,次いで異種蛋白を用いて経腟免疫動物にみられる免疫現象の特徴を追求した.同種睾丸乳剤で経腟免疫すると,循環抗体はFreund's Adjuvantを使用したときのみ出現するが低値であつた.しかし子宮感作はAdjuvant使用や免疫期間と関係なく著明であつた.異種蛋白で経腟免疫すると,Adjuvantを使用しなくても抗体を認めたがやはり低値であつた.これに対し子宮は生体で抗原を作用させたとき著明に収縮した.又螢光抗体法で全身の網内系組織に抗体を認めなかつたにも拘らず子宮頚管組織には明らかな螢光を認めた.以上の事より経腟免疫動物にみられる免疫現象の特徴は循環抗体よりも性器が強く感作される事であつた.