著者
高嶋 忍
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.253-264, 2015-03-20 (Released:2017-06-12)

需要減少や後継者難により伝統工芸産業全体が衰退しているといわれる現在,各地方自治体では様々な普及活動が行われている。産業として衰退しつつある「伝統工芸」を守り普及するための取り組みは,教育と文化に関わる現在的問題である。伝統工芸は,現行の学習指導要領で取り上げられているように美術教育における課題の一つであり,また地域文化の育成という意味では社会教育的課題である。本稿では伝統工芸の普及活動の事例として赤穂緞通を取り上げ,各地域の普及活動と比較する。そして目的は,中学生が職場体験として伝統工芸を体験する意義を探り,伝統工芸の現状と課題を考察することである。その結果,赤穂緞通の工房は技術の伝承に成功し,地域文化を学ぶ場を提供している一方で,普及活動を行う上で,行政との関係に改善の余地があることも明らかになった。