著者
高村 光幸
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.244-247, 2021 (Released:2022-08-12)
参考文献数
9

【緒言】染色体異常のある先天性障害児の生活の質が,漢方治療にて改善した2例について検討した。【症例1】5p 欠失症候群の6歳男児。興奮性と不眠の加療目的で甘麦大棗湯に小建中湯を追加,さらに抑肝散を併用後,明らかに興奮する度合いが減り朝まで熟睡するようになった。【症例2】2歳男児。8番染色体異常あり。胸部術後に抜管困難となり,気管切開,胃瘻造設となった。5から15分に1回と,頻回な吸痰が必要で,また常に下痢するとして漢方治療開始。茯苓飲合半夏厚朴湯にて吸痰回数減少し,小建中湯を追加後,2時間以上吸引が不要となり,下痢も改善した。気切部位閉鎖術後も黄耆建中湯,小青竜湯,人参湯にて経過をみているが,保育園に通園するようになり非常に元気に過ごしている。【考察】生命予後には関与しないような小さな改善ではあるが,生活の質向上と養育者の負担軽減に寄与できた。小児へ漢方治療を行うことのひとつの意義と考える。
著者
高村 光幸 横地 歩 丸山 一男
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.222-226, 2017 (Released:2017-12-26)
参考文献数
23

症例は,標準量のプロトンポンプ阻害薬(PPI)を服用しても,おくび,夜間悪化する咽頭痛・背部痛が持続したPPI 抵抗性胃食道逆流症(GERD)の72歳男性。茯苓飲開始後,速やかに諸症状改善したためPPI を自己中止したが,夜間症状再燃。このため眠前に半夏瀉心湯5g を追加後,症状は軽快し,処方医師許可にてPPI 中止可能となった。しかし上部消化管内視鏡では,ロサンゼルス分類Grade D と粘膜所見不良であったため,半夏瀉心湯を7.5 g 分3に増量,眠前に黄連解毒湯5g 追加した。以降の自覚症状は消失も,通院中の内視鏡再検はできなかった。 ガイドラインでPPI 抵抗性GERD に追加投与を推奨されている六君子湯以外の処方もGERD 治療に有効な可能性を示せた。一方で,GERD の内視鏡所見と自覚症状が相関しないのは一般的だが,合併症予防目的での漢方薬による治療エンドポイント決定に関して議論の余地があると思われた。