著者
小関 純一 高橋 達児
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.67-73, 1980-04-30

本邦の放牧草地におけるt-アコニット酸の蓄積に及ぼす若干の要因について検討を加え,これらとグラステタニー症発生との関連を明らかにしようとした。試験方法は次の三法によった。1)本症または類似症状の発生がみられた東北・北海道地域の7草地について,レッドトップを中心にそのt-アコニット酸含量の実態調査。なお,非発生草地の例として,西那須野の草地試験場内圃場を供試した。2)造成後7年目の草地試験場内圃場において,少・多2段階の施肥処理を設けてレッドトップ中のt-アコニット酸含量の季節変化を調査。3)造成後2年目の草地試験場内圃場にて,レッドトップ中のt-アコニット酸含量に及ぼすNもを含めた無機組成の影響について検討した。処理はMgの施用量(4段階)を中心に6水準。得られた結果は次のごとくである。1)本邦の放牧草地において,t-アコニット酸の蓄積に最も関係のある草種はレッドトップと考えられ,それに次ぐものとして,リードキヤナリーグラスならびにレッドフエスクなどがあげられた。2)レッドトップ中のt-アコニット酸含量の季節変化は少肥区と多肥区では,全く異なる傾向がみられた。3)レッドトップ中のN含量のみがそのt-アコニット酸含量の増大を促進し,他の無機成分(K,Ca,Mg)含量の増大は逆にそのt-アコニット酸含量の低下と密接な関係を示した。以上の結果より,施肥などを含めた土壌のN供給力が大きく,かっ,Ca,Mgなどの供給力が低い条件下において,レッドトップが優占している草地ではt-アコニット酸が蓄積しやすく,グララステタニー症発生の危険性が高まるものと考えられた。そして,本症発生の地域性を説明する上で,この要因は欠かすことができないことが明らかになった。
著者
小関 純一 高橋 達児
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.308-316, 1975-12-25

寒地型牧草6草種を6年間にわたって,一応放牧条件を想定した刈取管理のもとで多・少肥の2段階の施肥処理を設けて栽培した。その結果について草生の変化を,主として夏がれ現象の点から解析し,つぎの知見が得られた。1)夏期前回再生期間中の平均気温上昇および梅雨期雨量の増大と夏がれ発生との間に密接な関係が認められた。2)多肥区の場合に各草種とも,上記の関係はとくに明らかであり,これら二つの要因の影響の度合は,オーチャードグラス>ペレニアルライグラス>レッドトップ>トールフエスク>ケンタッキーブルーグラスの順に小さくなった。少肥区では,夏がれに弱いペレニァルライグラスとオーチャードグラスのみ同様な関係はみられたが,その影響度合は多肥区に比して,著しく小さかった。3)これら気温と雨量の各要因別の影響度合はそれぞれ草種により異なる。たとえば,ペレニァルライグラスは両者とも大きく影響するが,レッドトップは気温により大きい影響をうけ,雨量の多少はあまり関係しない。4)以上のように,従来から夏がれ発生の原因として挙げられていた気温,干ばつ,病虫害などに,本邦においてはモンスーン地帯の特徴である梅雨の影響を加える必要が認められた。