- 著者
-
松原 克弥
髙川 雄平
- 出版者
- 日本ソフトウェア科学会
- 雑誌
- コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
- 巻号頁・発行日
- vol.39, no.1, pp.1_18-1_32, 2022-01-25 (Released:2022-03-25)
コンピュータ技術進歩の過程において,基盤ソフトウェアであるオペレーティングシステム(OS)の研究開発が盛んに行われ,数多くのOS実装が利用可能となった.デスクトップPCやスマートフォン,エンタープライズサーバなどの一部のプラットフォーム向けでは,WindowsやLinuxなどの少数のOSが寡占状態にあるが,すべてのシステムにおいて特定のOSが独占して採用されることはなく,現在でも,システムの目的や用途,プラットフォームの特性などに応じて複数のOSを使い分けている.著者らは,特性の異なる複数のOSを状況の変化に応じて動的に切り替えることで,OS上で稼働するサービスの負荷耐性や性能の改善を試みる手法を提案している.本論文では,LinuxとFreeBSDを対象として,サービス稼働中にそのシステム基盤であるOSの動的な切り替えを可能とすることを目的として,FreeBSDにおけるLinux互換プロセスのマイグレーション機構の実現手法についてまとめる.Linuxにおけるプロセスマイグレーション機構の標準ツールであるCRIUとのチェックポイントデータの相互互換性を維持することで,LinuxとFreeBSD間で同一のプロセスをマイグレーションする仕組みを実現する.本実現法では,FreeBSDカーネルとLinuxカーネルのOS機能の違いだけでなく,内部構造やインタフェース仕様の違いにも着目し,CRIUの各機能と同等の機能をFreeBSD上で実現する際の課題や実装の詳細を述べる.