著者
高橋 佳孝 大谷 一郎 魚住 順 余田 康郎 五十嵐 良造
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.338-344, 1988-03-20
被引用文献数
2

寒地型牧草における根滲出物の生長抑制作用の草種間差異を明らかにするため,9種の牧草を砂耕栽培している"ドナーポット"(対照区は砂のみ)からの流出液を,"レシーバポット"に砂耕栽培している牧草に定期的に灌注し,それらの生育反応を地上部乾物重によって比較した。得られた結果の概要は以下のとおりである。1. 各ドナー牧草の滲出物は同種または異種のレシーバ牧草の生育を抑制あるいは促進したが,全レシーバ草種を平均してみるといずれも抑制的で,この平均的抑制作用はペレニアルライグラスが最も高く,ルーサンが最も低かった。一方,個々のレシーバ牧草の反応をみると,オーチャードグラス,ペレニアルライグラス,レッドトップ,リードカナリーグラスおよびアルサイククローバの5草種はすべてのドナー牧草の滲出物によって生育が抑制され,また,ルーサンを除くすべての草種では,ドナー牧草9処理区の平均乾物重が対照区よりも劣った。2. マメ科牧草の滲出物を受けたレシーバ牧草の乾物重は概してイネ科牧草滲出物の処理区に比べて高く,この傾向はルーサンとシロクローバでとくに顕著に認められた。3. アルサイククローバ,シロクローバ,ペレニアルライグラスの3草種は異学種の滲出物より同一草種の滲出物によって生育をより強く阻害され,その他の草種では異なる草種の滲出物による抑制度の方がむしろ大きかった。また,異草種の滲出物に対する感受性の大きい草種ほど同一草種の滲出物に対する感受性も高いという一般的傾向が認められた。