著者
鯉沼 潤吉 加藤 航平 黒田 晶 山村 喜之 村川 力彦 大野 耕一
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.1065-1067, 2014-07-31 (Released:2015-01-23)
参考文献数
16

症例は86歳女性。腹痛を主訴に近医受診しイレウスの診断で当院紹介された。受診時腹部CTで腹水を認め,S状結腸付近に異物を思わせる高濃度の構造物を認めた。腹部所見が軽度であり当院内科に経過観察入院となったが,翌日腹部所見の増悪を認め,腹部CTで腹水の増加,遊離ガスを認めたことから消化管穿孔を疑い緊急手術を施行した。腹腔内には汚染腹水がみられ,全腸管を検索したところS状結腸に3mm大の穿孔部を認め,ピンク色の異物が穿孔部から突出していた。穿孔部を含むS状結腸を切除し,人工肛門造設術を施行した。術後経過は特に問題なく第31病日に退院した。発症の数日前に歯科医院で義歯を作製したエピソードがあり,歯科医に異物の照合を依頼したところ義歯作製時の印象材であることが判明した。歯科用印象材が穿孔をきたした例は報告が無く,非常にまれな症例であり報告する。