著者
金本 めぐみ 鷲尾 澪子
出版者
上智大学
雑誌
上智大学体育 (ISSN:02870568)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.63-77, 1990-03-25
被引用文献数
1

大学1・2年生580名を対象として,身体意識に関する調査を行い,次のような結果を得た。1. 調査対象者の体格は, 客観的評価からみれば, 男子4割, 女子3割が「痩身型」, 「やや痩せ型」に分類されるが自己評価では, 男子3割強, 女子1割強の者が「痩せている」「痩せている方である」に評価している。このことから客観的評価と自己評価に差があることがわかる。2. 日常の食習慣については, 男子に比べ, 女子の方が3食規則的に食事を摂取している。欠食状況は, 男女ともに「普通」から「太っている方である」に自己評価している者に, 朝食ぬきの傾向がみられる。3. 運動経験と身体の自己評価との関連は, 運動経験有りよりも運動経験無しの方が, 男女ともに「太っている方である」に自己評価している者が多い。4. 自分の身体について気にしている部位は, 男子は身体全体にわたッており, 女子は下半身に集中している。気にしている部位を今後どうしたいかについては, 男子は身長はより高く, 上半身は筋肉をつけて逞しくしたいという反面, 脚は長く細くなりたいという願望が強い。女子では脚, ウエスト, 腹部, ヒップなど下半身を細くしたいという願望が圧倒的に多くみられる。5. 身体に対する今後の願望については, 男子では現状維持が過半数を占めたが, 女子は現在より痩せたいが7割を占め, 女子の痩せることへの願望は顕著である。男子に比べ女子の極端な痩せ指向ということが, 本調査で明らかになった。これは, 思春期を過ぎた女子学生が美しくなりたい, 美しくみせたいと思う現れであろう。このような願望を持つことは, 自然なことでありそれ自体問題はないが, 痩せすぎのために, 女性としての生理機能にまで影響を及ぼすならば, 深刻な問題となってくるであろう。今後, 女子学生が極端な「痩せ指向」を望むのではなく, 美しく, はつらつとした健康的な身体づくりに目を向けられるよう, 体育指導者の一人として考えていく必要があると思われる。