著者
麓 弘道
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.641-693, 2017-12-15 (Released:2017-12-15)
参考文献数
121
被引用文献数
3

放射性廃棄物を処分する場合に,自然環境中に存在する自然放射性核種との関係をどのように考えればよいか,その観点から諸外国における放射性廃棄物の取り扱いをまとめた。また,1980年代にDe Minimisとして世界が概念を共有していた,取るに足らない放射能に対する考え方,及び,それを世界が合意した免除,クリアランスといった概念の構築についてまとめた。さらに,放射性廃棄物の処分や免除,クリアランスについて,各国がどのように制度化したのか,そして,この制度化に当たり,ウラン核種を代表とする自然放射性核種がどのように関係しているか確認する。
著者
麓 弘道
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.68, no.11, pp.773-789, 2019-11-15 (Released:2019-11-15)
参考文献数
37
被引用文献数
2

自然放射性核種を含む廃棄物の処分や超ウラン核種を含む廃棄物について,浅地中処分の基準をどこに求めるか考察し,地殻に存在するラジウムの代表的な数値である10 nCi/gが広く判断の目安として取り入れられていることを確認した1, 2)。本資料では,免除とクリアランスの考え方を廃棄物処分の観点から再構築する。我が国では,放射性物質が,免除とクリアランスの区分に分別されたと確認された後は,放射性物質ではなくなるので,放射線防護から外れると理解されている。しかしながら,LNTモデルを前提とする放射線防護体系では,ここから放射性物質として扱わないとする閾値はない。そのため,諸外国では,免除・クリアランスを柔軟に運用しており,特に廃棄物処分ではそれが顕著である。IAEAも指摘しているように,国際的に統一したクリアランスレベルを定めるのは,クリアランス対象物が国際流通する懸念があるためである。当該国で完結する廃棄物処分においては,その基準は各国の裁量に任されていると理解してよい。ここでは,各国の処分における,免除・クリアランスの適用を確認し,ともすると硬直しがちな我が国の放射線防護に柔軟性を取り入れる参考とする。
著者
麓 弘道
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.631-642, 2019-09-15 (Released:2019-09-15)
参考文献数
21
被引用文献数
1

自然放射性核種については,IAEAが1962年の国際基本安全基準(BSS)で記載した10 nCi/g (370 Bq/g)が広く判断の目安として取り入れられている。同様に10 nCi/g (370 Bq/g)が超ウラン元素を含む放射性廃棄物を浅地中処分する場合の目安となっていることを本資料では明らかとする。時は冷戦の真っただ中で,兵器用の核分裂性物質の大量生産が国を挙げて進められていた中で,いくつかの偶然により,当時の米国原子力委員会(AEC)がどうしても浅地中処分の基準を設定しなければならない状況に陥った。そこで,自然環境における,鉱石中のラジウム濃度の比較的高い領域から10 nCi/g (370 Bq/g)を選んで閾値としたものである。一見乱暴なようであるが,公衆に受け入れられる基準の引き方として大いに参考にすべきと考え,本資料ではそこに至る背景を詳細に説明することとした。