著者
"柿沢 昭宣" "カキザワ アキノブ" Akinobu" "KAKIZAWA
雑誌
経営情報研究 : 摂南大学経営情報学部論集
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-25, 1999-07

よく知られているように、株式会社の発生は、1602年設立のオランダ東インド会社にもとめられるというのが学会の定説である。定説とされている理由は、株式会社が資本の大量動員に適した会社企業であって経済活動の発展とともにその重要性をいちじるしく高めてきているなかで、このオランダ東インド会社は今日の株式会社の形態的特徴をほぼそなえていて、その後の株式会社の形成に大きな影響をあたえたという点にある。しかし、株式会社の発生についてのこのような説明には、資本の大量動員に資するなら別の会社形態でもよかったのではないか、いいかえれば株式会社の形成は歴史上の偶然事にすぎなかったのかという疑念をよびおこす。しかし、株式会社の本質は諸人格の結合体というより、無数の資本の結合体というところにあり、したがって特定の諸人格から自立した会社企業が株式会社にほかならないといってよいから、株式会社は、近代的銀行制度の発展と歩調をあわせるようにして形成され、発展してきたというのが株式会社形成の実相なのである。なぜなら、株式会社に結集した資本はその持ち手たる人格から自立した資本というあり方のうちにあり、この資本の人格からの自立化をおしすすめたのが、この近代的銀行制度だったからである。近代的銀行制度は、社会のあらゆる遊休資本を自らのうちに集積する一方で、それを資本市場に投ずることによって、社会の貨幣資本という貨幣資本に、その持ち手の努力や才覚を超越した均一の利子率を賦与し、かくして資本の人格からの自立化を実現させることになったからである。