著者
Ballato Arthur
出版者
超音波エレクトロニクスの基礎と応用に関するシンポジウム運営委員会
雑誌
超音波エレクトロニクスの基礎と応用に関するシンポジウム講演予稿集
巻号頁・発行日
no.5, 1984-12-04

時間という概念はピラミッドの時代よりも古くから存在します。時間の経過を表示するための装置は,あの,日時計にもみられるように,これまで,何千年もの間,次々と改良されながら使われてきました。とくに精密な天体観測がなされるようになったこのニ・三百年の間における発展はめざましいものがあります。単位時間に繰り返される事象を数えるという周波数の概念は,時間の概念よりかなり新しい概念です。これは,今ではよく理解されていますが,あのコインの表裏関係にあるのです。水晶発振器を用いた電子素子の出現によって,標準時計に匹敵する程度に正確な精度で周波数の励振や測定ができるようになりました。それ以来,時間と周波数の発生,制御,計測,そして伝送は,精度において,実用性において,便利さにおいて,爆発的な進歩をとげています。何処にもある水晶腕時計は低価格でありながら研究室以外の環境においても1ヶ月に数秒の精度で時間を刻んでくれるようになる一方,周波数は人類にとって最も精密な測定手法として進歩をつづけています。この講演では周波数制御と時間制御の研究について,歴史的に記録すべき出来事を考えてみましょう。また,最近の古典力学規準や,量子力学的な規準をも含めて現在の可能性と応用範囲についての技術を考えてみましょう。そして,講演のむすびでは,将来の応用,安定性の要求,それらを実現するための障害とそれを乗り越えるための可能な方法などについて述べるつもりです。