著者
BERDUO Francisco HAYATA Takashi KAWASHIMA Yoshiro
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.42, no.12, pp.1697-1701, 1990-12-01

日常臨床上, 子宮内膜症を有する不妊症患者に遭遇する機会は多い. われわれの既往妊娠・分娩歴からみた子宮内膜症統計によると, ことに外性子宮内膜症においてその妊孕性は低い(59%). そこで, 子宮内膜症の根絶が不妊婦人に福音をもたらすとの観点から, 子宮内膜症の発生病理の解明を図らんとした. 著者らは以前, 内性子宮内膜症を代表する子宮腺筋症に着目し, その異所性内膜腺管上皮の電顕像を得, 所見を正所性子宮内膜 (増殖期) および高分化型子宮内膜腺癌の電顕所見と比較検討した. その際, 子宮内膜症が類腫瘍性増殖の可能性を有していることが示された. 今回, 外性子宮内膜症の代表として, 不妊症と関連の深い卵巣チョコレート嚢胞内腔面を構成する上皮細胞を電顕的に検討した. その結果, 異所性子宮内膜を有する子宮腺筋症と, 卵巣チョコレート嚢胞の主役を成す腺管ないしは嚢胞内腔上皮は, 電顕的に異なることが示された. このことは, 子宮腺筋症における正所性子宮内膜基底層の連続進展説を併せ考えても, 卵巣チョコレート嚢胞の発生病理は, 子宮腺筋症のそれとは異なることが示された. また, 後者の低い妊孕率からも, 卵巣チョコレート嚢胞を代表とする外性子宮内膜症には, 不妊症臨床上, 格別の配慮が望まれる.