著者
宮腰 均 ミヤコシ ヒトシ Hitoshi MIYAKOSHI
雑誌
岐阜薬科大学紀要 = The annual proceedings of Gifu Pharmaceutical University
巻号頁・発行日
vol.62, pp.48-56, 2013-06-30

ヒトデオキシウリジントリホスファターゼ(dUTPase)阻害剤は5-フルオロウラシルをベースとした化学療法との併用剤として現在の化学療法の治療効果を改善できる可能性がある。著者はdUTPase 阻害剤の開発を目的にウラシル誘導体のSAR 研究を行った。dUTPase を強く阻害できる骨格としてN-カルボニルピロリジンまたはN-スルホニルピロリジン構造を有するウラシル誘導体及び1,2,3-トリアゾール構造を有するウラシル誘導体を見出した。その中で、化合物14cは非常に強いヒトdUTPase 阻害活性(IC50 = 0.067 M)且つ良好な薬物動態プロファイルを有しており、in vitro においてはHeLa S3 細胞に対し、5-フルオロ-2’-デオキシウリジンの細胞増殖抑制効果(EC50 = 0.07 M)を、またin vivo においてはMX-1 細胞に対し、5-フルオロウラシルの抗腫瘍効果を劇的に増強した。また著者は化合物8a とヒトdUTPase との共結晶構造解析を行い、新規dUTPase 阻害剤のウラシル環と末端ベンゼンがそれぞれウラシルポケットと疎水性ポケットと相互作用し、且つスタッキングし安定化することでdUTPase を阻害していることを明らかにした。これらのデータから、見出した化合物14c は臨床においても5-フルオロウラシルのようなチミジレートシンターゼ阻害剤の治療効果を劇的に改善することが期待される。