著者
JINNO Masao
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.102-110, 1986-01-01
被引用文献数
7

ヒト体外受精に使われている培養液を,ICRマウス2細胞期卵の発育により比較・検討した.delayed centrifuged(DC,一般の血清処理法)婦人血清が添加タンパク成分として使われた時には,修正Krebs-Ringer-bicarbonate solution(m-KRB)は,胞胚形成率,孵化率ともに,修正Ham'sF-10(m-HF10)より,HF10粉末の製造会社によらず,すぐれていた.m-KRBを培養液のベースとする時の添加タンパク成分としては,immediately cooled and centrifuged(ICC,新しい血清処理法)婦人血清が,DC婦人血清やDC臍帯血血清に比し,胞胚形成率,孵化率ともに有意に高かつた.DC婦人血清とDC臍帯血血清の間には有意差を認めなかつた.またヒトならびにウシ血清アルブミンは,胞胚形成率においてはICC婦人血清と同様であつたが,孵化率において著しい低下を認めた.ヒトとウシの血清アルブミンの間には差が認められなかつた.ヒト体外受精の成績をretrospectiveに検討した結果,統計学的に有意差は認められなかつたが,ICC患者血清を添加したm-KRBによる受精率・分割率は,DC患者血清を添加したm-HF10の時よりも高い傾向が認められた.