著者
木竜 徹 加藤 元樹 斉藤 義明 Kiryu Tohru Katoh Motoki Saitoh Yoshiaki
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D-2 情報・システム (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.73, no.10, pp.p1779-1785, 1990-10
被引用文献数
5 3

誘発波は生体システムのインパルスレスポンスであり,神経系の状態を探る貴重な情報源として種々の研究に使われている.本論文では疲労時の誘発筋電図に着目し,その詳細な解析により筋疲労機序の解明を試みる.従来,筋疲労は一定負荷時の表面筋電図に見られるパワースペクトルの低域化のみで特徴づけられ,種々の生理的要因が報告されている.誘発筋電図は一定負荷時よりも活動している筋線維の数が多く,しかも疲労しやすいFT(fast twitch)系筋線維の活動が顕著である.従って,早期に疲労の兆候が現れる可能性がある.これまで誘発波はその形状,生成過程ゆえに,種々の工学的波形解析法が試みられてきた.しかし,その範ちゅうは時不変,線形システムであることが多く,本研究の対象には合わない.本論文では一定負荷状態を持続しながら,疲労に至る過程で外部刺激による誘発筋電図を繰り返し計測し,これらの波形に対し,興奮電位の伝導速度をDPマッチングパス,また筋線維組成にかかわる活動レベルを瞬時周波数パターンで詳細に解析する.その結果,瞬時周波数パターンに2段階の変化が観察でき,シミュレーションによれば,FT系筋線維の活動停止が伝導速度の低下よりも早期に現れているものと思われた.