著者
池谷 真梨子 Mariko Ikeya
出版者
和洋女子大学
巻号頁・発行日
2016-03-18

近年,保育所に通う乳幼児が増加している。乳幼児期は「食を営む力」の基礎を培う時期であることから保育所での食事提供の意義は大きい。手づかみ食べは「授乳・離乳の支援ガイド」で重要性が示されているが,限られた分野での研究しか見当たらない。 そこで本研究では手づかみ食べに着目し,手づかみ食べの発達過程とその関連要因を検討することを目的とした。保育所に通う乳幼児10名を対象とした週2回(計133回)のビデオ観察調査と給食で提供されている料理の分析,対象児の母親へのインタビュー調査および東京都認可保育所1,627園の保育士への質問紙調査(有効回収率37.1%)により分析を行った。関連要因は,料理および母親の手づかみ食べに対する考え方と食事場面における乳幼児への介助とした。 手づかみ食べの発達過程について,手づかみ食べを最も多くする月を基点とすることで手づかみ食べは約2か月で急激に発達し,その直後1か月で食具食べへ移行したため手づかみ食べは減少する発達過程の特徴が明らかとなった。さらに,手づかみ食べは自分で食べる行動を促す食行動であることが示され,手づかみ食べが乳幼児の食行動の発達の上での重要性が示された。加えて手づかみ食べが最も多くみられた後期1か月の手づかみ食べはその直前の前期2か月より料理による影響が大きいことが示された。後期において主材料の肉類・調味料の酢・調理法の揚げる・食べ物の長さ・摂取率の項目で手づかみ食べをした料理としなかった料理の有意差が認められ,手づかみ食べに料理の大きさや乳幼児自身の嗜好が関連していることが示唆された。 一方,手づかみ食べの発達過程の類型と母親の手づかみ食べに対する考え方および食事場面における乳幼児への介助との関連性を検討した結果,手づかみ食べを多くしている乳幼児の母親は少ない児の母親に比べて手づかみ食べに積極的であり,乳幼児が主体的に食べる食環境を作っていた。これより,手づかみ食べの発達過程の違いの要因として,家庭での食事介助が示唆された。 本研究は保育士の乳幼児や保護者への対応および管理栄養士・栄養士を含めた調理従事者への情報提供への研究展開が期待できる。