著者
Shigeo HIROSE Mikio SATO
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
Journal of the Robotics Society of Japan (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.128-135, 1989-04-15 (Released:2010-08-25)
参考文献数
5
被引用文献数
2 11

ロボットの機能性向上のためには多自由度化することが不可欠である.しかし, 在来のアクチュエータの出力重量比は著しく制限されている.単純な多自由度化はロボット重量の過大な増加を招く.そのため機能性を十分発揮し得る軽量で現実的なロボット, 特にこれから必要とされてゆく自律移動ロボットを実現してゆくためには, 従来とはまったく異なる新しい設計手法が必要とされる.本研究は, 多自由度化と同時に軽量化も計る新しいロボット設計手法を提案する.提案する設計手法は, ロボットに装備する複数の自由度を使用頻度の高い作動状態において出来る限り相互に干渉させ, 共同駆動させようとするものであり「干渉駆動」と呼ぶ.干渉駆動によれば, 多自由度的な機能を発揮するために複数のアクチュエータが装備されていたとしても, 各アクチュエータが装備すべき出力容量は低く抑えられる.よってロボット本体の重量も軽減できる.従来, 制御性の観点からはロボットの駆動系は出来る限り非干渉化すべきであるとされてきた.提案する干渉駆動は, 逆に出来る限り干渉化させるべきであることをハードの立場から主張している.干渉駆動の評価関数として, 装備すべき全出力パワーに対する作業のためのパワーの比である「駆動率ηc」を導入する.干渉駆動の考え方に基づくロボットの機構設計および制御法を検討するため, 4足で壁面を垂直上方に吸着歩行するロボットを想定しシミュレーション実験を行う.実験は準静的な運動を対象とし, 歩行ロボットの機構や歩行姿勢が与えられたとき, その駆動率を最大化する歩行を線形画法によって誘導している.この実験により, 干渉駆動の考え方の導入がロボットの軽量/高速化設計に有効であることを明らかにしている.