著者
Motoyuki Ishimori Saneyuki Kawabata
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.172-180, 2014 (Released:2014-04-29)
参考文献数
48
被引用文献数
2 5

MADS-box 遺伝子ファミリーは植物において最も大きい転写因子遺伝子ファミリーのひとつであり,様々な発達段階で必要である.花の発達に関する多くの研究が,特に MIKCc-type MADS-box 遺伝子が正常な花器官の発達に必須であることを示している.私たちはトルコギキョウの花で発現している MIKCc-type MADS-box 遺伝子を同定し,それらの特徴を調べた.計 23 遺伝子が同定され,10 の系統に分けられた.それらは保存された特異的モチーフにより特徴づけられていた.系統樹解析により,AG/PLE,AP3/DEF,PI/GLO,SEP クレードにおける多様化と最近の遺伝子重複の発生が示唆された.花器官特異的な発現パターンは,AP3/DEF と SEP 系統に属する遺伝子内では部分的に多様化している一方で,AG/PLE と PI/GLO 系統の遺伝子の発現パターンは保存されていることが明らかとなった.これらの結果はトルコギキョウの花器官のアイデンティティの規定には,保存的な発現と多様化した発現を有する遺伝子の両方が寄与していることを示唆した.