著者
仲渡 理恵子 NAKATO Rieko
出版者
京都
雑誌
同志社女子大学大学院文学研究科紀要 = Papers in Language, Literature, and Culture : Graduate School of Literary Studies, Doshisha Women's College of Liberal Arts (ISSN:18849296)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.127-151, 2022-03-31

副詞「せいぜい」「たかだか」「たかが」は、さまざまな観点から研究されているものの、意味の相違や使い分けなどが明確にされているとは言いがたい。本稿は、日本語書き言葉コーパスから、各々100 用例を抽出し、文型による構文的展開を分析し、相互置換の可否及び副詞「せめて」「少なくとも」との関連性から考察したものである。その結果、「せいぜい」は9 種の構文的展開があり、数量詞を伴う後接語が多い点から「最大限の見積もり」の意味が強く表れ、「せいぜいM(=Maximum:話し手の主観による最大限の見積もり)だ/ない/だろう/下さい」とモデル化できた。「たかだか」は7 種の構文的展開で使用でき、数量を伴う後接語もあることから「最大限の見積もり」の意味を有するが、「マイナス評価」を含む傾向があり、人の行為を述べる際には用いられにくく、モデル化は「たかだかM+NE(=Negative Evaluation:話し手の主観的なマイナス評価)だ/ない/じゃないか」となった。「たかが」は特有の定型化された用法を有し、後接する語にさして数量詞を伴わないため、「見積もり」より「マイナス評価」が全面に表れ、話し手自身の自虐及び聞き手への非難から「たかがNE じゃないか/のに/のくせに」とモデル化できた。最大限を表すとされる「せめて」「少なくとも」はあくまで話し手の主観であったが、「せいぜい」「たかだか」「たかが」は話し手が聞き手を強く意識して、最大限やマイナス評価を伝える副詞であると結論付けることができた。