著者
西田 瞳 NISHIDA Hitomi
出版者
京都
雑誌
同志社女子大学大学院文学研究科紀要 = Papers in Language, Literature, and Culture : Graduate School of Literary Studies, Doshisha Women's College of Liberal Arts (ISSN:18849296)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.83-109, 2015-03-31

本研究では、ファッション行為には自己主張性、自己顕示性、競争性の3 つの心理学的要因が影響すると仮定して、ファッションにおける他者比較の心理を明らかにするためにアンケート調査を実施した。調査結果は因子分析を行い、次の4 つの因子を抽出した。 因子1:自己主張性尺度が多く含まれる「自己主張の因子」 因子2:個性についての質問が多く含まれる「個性化の因子」 因子3: 同じものを好み、流行に合わせることについての質問が多く含まれる「模倣的・同調」の因子 因子4: 競争心尺度と自己顕示性尺度の項目が多く含まれる「競争心+自己顕示の因子」 その上で、それぞれの因子においてもっとも負荷量の高かった項目に基づいて因子にあてはまる者とあてはまらない者の間でt 検定を行うことで、調査協力者の内部構造の分析を試みた。その結果、自己主張の高い人たちは、個性的なファッションアイテムを好むことが示された。個性化願望の高い人たちは、注目されるのが好きであることが示された。模倣性の高い人たちは、友達とファッションを真似されたり真似したりすることで自信を高めることが示された。競争心の高い人たちは、流行のファッションアイテムを取り入れることで魅力的になれると感じたことが示された。また、みんなと同じで自分を隠したいという者は、圧倒的に少数派であった一方、みんなと同じだけど誰よりも魅力的な自分やみんなとは違う魅力的な自分を追い求める形でファッションを楽しむ者が多数派であることが示された。 Tarde やSimmel の時代から100 年程度経った今でも人間の本質は、そうそう変質するものではない。現代のように、ファッションの選択肢が格段に増えてきても、多くの人は、なおみんなと同じということにこだわりを持ちつつも、みんなと同じ中でなおかつ自分が一番でいたいという自己顕示性を求め、自分や他人と競争を続けているのである。