著者
LOWE David J. PITTARI Adrian
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.130, no.1, pp.117-141, 2021-02-25 (Released:2021-03-18)
参考文献数
122
被引用文献数
2 7

西暦232 ± 10年の晩夏にニュージーランド北島タウポ火山で起こった噴火は,過去5,000年間において地球上で起こった噴火のなかでもっとも強力なものであった。噴火は数日から数週間継続し,5つの明確な降下火砕堆積物(ユニットY1~Y5)に続いて,非常に爆発的な噴火による低アスペクト比イグニンブライト(ユニットY6)が堆積した。降下火砕堆積物の内,ユニットY1,Y3およびY4は水蒸気プリニー式噴火によって形成され,Y2とY5はプリニー式噴火であった。Y5とY6は一連の噴火で形成され,非常に強いY5噴火による噴煙柱は高度35-40 kmに達し,それが崩壊することによって非常に高速(600-900 km/h)で高温(最高500°C)の火砕密度流が発生し,ユニットY6が堆積した。このイベントによる堆積物は噴火後十数分で北島中央部の約20,000 km2に及ぶ範囲を覆い尽したと考えられる。また一連の噴火によるマグマ噴出量は約35 km3と見積もられている。この噴火による周辺環境への影響は甚大であり,現代においても農業などの土地利用において火山ガラスを多く含み,コバルトなどの微量元素に枯渇した土壌への対策が必要となっている。