著者
Sasaki Shigeru KATAYAMA Paul K Roesler Mark Pattillo Roland A Mattingly Richard F. OHKAWA Kimiyasu
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.34, no.12, pp.2253-2256, 1982-12-01
被引用文献数
21

Gestational choriocarcinomaの患者から樹立された5つの細胞株についてGiemsa染色およびQ-バンド分染法による染色体分析を施行した.5つの絨毛癌細胞株の染色体数はいずれも低四倍体にそのモードを有しており,どの細胞株にも構造の変化した分類不能の染色体がいわゆるマーカー染色体として認められた.正常男児出産後に発生した絨毛癌細胞株2株のうちBeWo株にはY染色体をみることができなかつたがJar株には明らかにY染色体が認められた.また完全胞状奇胎後に発症した絨毛癌2株のうちElFa株には明らかにY染色体が認められ,もうひとつのDoSmi株には対をなす染色体にheterozygousの組み合わせがみられた.長年の継代培養による影響を考慮に入れてもこれらの先行妊娠である胞状奇胎は2精子受精によるものであることが示唆された.ところで先に我々は46,XY完全胞状奇胎が2精子受精であることを証明し発表しているが,その後の追加症例の経験から2精子受精の胞状奇胎に悪性化が高頻度に起こるのではないかという印象を持つていた.今回の研究結果から今後2精子受精による胞状奇胎の予後に注目すべきであると考えられた.