著者
澤岡 藩 サワオカ サカエ Sakae SAWAOKA
雑誌
岐阜藥科大學紀要 = The annual proceedings of Gifu College of Pharmacy
巻号頁・発行日
vol.57, pp.65-73, 2008-06-30

あるジャンルの特性を明らかにしたいという試みは、ことばはある時代に共通した精神的指向性を持って有力なジャンルを生成させるという認識に由来する。「小説」ということばは現在のところ明確な概念を与えられてはいない。ナラトロジー物語論は、形式的テクスト分析として、ジェラール・ジュネットの分析をはじめとして個別的に成果を上げた。 しかし「小説」と言う概念を「物語」という構造に収まらないものとして仮定するとき、理論と批評との軋轢が生じ、その方法そのものが矛盾を来すものとなる。一つの可能性としてミハイル・バフチンの理論が有効に小説の形式的特性を提示している。そこでの作者と作品内部の人格を相互に他者として扱う対話的思考形態に基づく考えかたは、言語論的には疑いを生じさせるが、示唆に富む。