著者
高木 信二 Sangjin Kim 亀岡 弘和 山岸 順一
雑誌
研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:21888663)
巻号頁・発行日
vol.2016-SLP-114, no.21, pp.1-6, 2016-12-13

多くの統計的パラメトリック音声合成システムでは,高品質ボコーダを用い,音声波形を構築する.その際,ソース ・ フィルタモデルに基づくボコーダが利用されることが多く,言語特徴量からメルケプストラム,F0 といった音響特徴量を予測し,ボコーダによる音声波形生成が行われる.しかし,ボコーダを用いたことに起因する合成音声の自然性の低下が常に問題となっており,これまで様々な研究が報告されている.しかし,ソース ・ フィルタモデルに基づいている限り,この問題を完全に解決することは容易ではない.そこで本研究では,ボコーダを用いない音声合成システム構築することを考える.具体的には,統計的パラメトリック音声合成において,振幅スペクトルからの位相復元,逆短時間フーリエ変換,および重加算法 (OLA) に基づき波形を生成することについて検討する.今回提案する音声合成の枠組みでは,まず,調波構造を含む振幅スペクトルの予測を DNN 音響モデルにより行い,次に,予測された振幅スペクトルから Griffin / Lim 法により位相を復元することで,音声波形の生成を行う.主観評価実験により,高品質ボコーダを用いた DNN 音声合成システムと提案システムの比較を行った結果,提案法ではボコーダに基づく合成音声特有のバジー感が無い合成音声の生成が可能であることを確認できた.