著者
伊里 友一朗 松下 和樹 塩田 謙人 三宅 淳巳 Izato Yuichiro Matsushita Kazuki Shiota Kento Miyake Atsumi
出版者
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告: 高エネルギー物質研究会: 令和元年度研究成果報告書 = JAXA Research and Development Report: Technical Report of The Research Activity for High Energy Materials (2019) (ISSN:24332216)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-19-003, pp.27-33, 2020-02-20

高毒性を有するヒドラジン系化合物を代替する革新的なグリーンプロペラントとして,アンモニウムジニトラミド(ADN)を主剤とするイオン液体推進剤(EILPs)の研究を行ってきた.その研究過程において,当該EILPs実用化に向けた課題についても明確になり,喫緊に着火方法の確立が必要である.EILPsはイオン液体の高い熱安定性が,推進剤としての着火性をトレードオフとして失わせているのである.そこで光や電気化学反応による着火システムに我々は着目した.それらは熱的な化学反応とは反応ルートが全く異なるため,熱的に難着火性のEILPsに関しても着火を誘起することが期待できる.その可能性を検討するため,量子化学計算および詳細反応モデルを用いて,ADNの電解反応経路とADN/硝酸ヒドラジン(HN)混合溶液の熱分解反応を調査した.その結果,ADNは電気的に還元されることによって速やかに,かつ不可逆的に分解することが示唆され,電解過程でNO2等のラジカルを生成する.またADN/HN溶液は,NO2をラジカル担体とする連鎖分岐反応によって瞬間的に熱分解することがわかった.これらはADN系イオン液体に関する電解着火方式の実現性を支持する結果である.