著者
夏秋 啓子 N.B. BAJET T. Keiko Natsuaki Bajet N.B.
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.48-52,

フィリピンのルソン島バタンガスで採集した輪紋症状を示すパパイヤ(Carica papaya)からウイルスの1分離株(PRSV-P-B)を得た。このウイルスを各種植物へ汁液接種したところ,全身感染したパパイヤ,ズッキーニ(Cucurbita pepo),メロン(Cucumis melo),シロウリ(Cucumis melo var. conomon),ニホンカボチャ(Cucurbita moschata),およびキュウリ(Cucumis sativus)と局所感染したC. amaranticolorの7種に感染した。電子顕微鏡観察ではパパイヤ病株や汁液接種したズッキーニに幅12nm,長さ700~800nmのひも状ウイルス粒子と細胞質封入体の破片とが認められた。PRSV-P-BはELISAでパパイヤ輪点ウイルス抗血清(ATCC)と陽性反応を,ズッキーニ黄斑モザイクウイルス抗血清(ATCC)および真岡哲夫博士より分譲を受けたパパイヤ奇形葉モザイクウイルス(PLDMV)の抗血清とは陰性反応を示した。ウイルス外被タンパク質の分子量は約36Kであった。以上の性質から,フィリピンのパパイヤから分離されたPRSV-P-Bはパパイヤ輪点ウイルスと同定,確認された。PRSV-P-Bに対する抗血清を作製し,健全ズッキーニ葉汁で吸収してからELISAに用いた。PRSV-P-Bは新鮮なあるいは乾燥したパパイヤあるいはズッキーニ病葉からELISA,DIBA,そしてTIBAによって検出された。さらに,PRSV-P-Bは渡辺ら(1998)によるPRSV特異的合成プライマーを利用したRT-PCRによって増幅された。PLDMV(真岡哲夫博士から分譲)は同プライマーで増幅されなかったので,RT-PCRはPRSVとPLDMVの迅速な類別に有効と考えられた。