著者
向井 利典 三宅 亘 寺沢 敏夫 平尾 邦雄 MUKAI T. MIYAKE W. TERASAWA T. HIRAO K.
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集: 宇宙観測研究報告 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.59-74, 1986-03

本論文は, ハレー彗星探査機「すいせい」に搭載された太陽風観測装置の最初の2ヶ月間のイオン観測をまとめたものである。探査機はハレー彗星への巡行中であり, 最接近に向けて太陽風そのものの観測を行っている。現在は太陽活動極小期にあるため, 太陽風の状態は太陽自転に同期した典型的な変動を示している。観測器の性能は予期した以上のものを発揮し, H^+とHe^<++>の区別は勿論, O^<+6>, Si^<+7>, Si^<+8>等, 極微量成分の弁別まで可能である。これら重粒子イオンは太陽コロナの情報をもたらす貴重なデータであり, 特に低速度の太陽風で明瞭に観測されている。又, 太陽風のミクロな物理現象として, アルヴェン波やプロトンの温度異方性の存在も見出された。さらに, 流速が低速から高速に変化する時に速度ベクトルが西向きに大きく変化することも判った。これは低速域に高速流が追いついてきたときの相互作用によって生じたものと考えられる。