著者
伊藤 忠夫 Tadao Itoh 中京大学教養部
雑誌
中京大学教養論叢 = Chukyo University bulletin of the Faculty of Liberal Arts (ISSN:02867982)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.999-1070, 1990-02-28

モンボト〓の『言語の起源と進歩について』その源泉, 創まり, 背景特に弁護士図書館に注目してこの論文は, モンボド〓の『言語の起源と進歩について』 (全6巻, 1773-1792) の源泉と初期の展開を同時代の知的背景に照らして検討し, その時代の文脈におけるこの著作の目的と意義のより充分な理解を目的とする。この論文は, モンボドによる弁護士図書館所蔵の文書・著作の広範な活用と, この図書館の創設と結び付いていた16世紀のスコットランド法学の人文主義的伝統の彼に対する影響とに, 特に関心を向けている。この論文は, 『言語の起源と進歩について』の最初の二巻を集中的に検討しているが, それは, この二巻が言語の自然的歴史と普遍文法を扱い, モンボドの言語観の真髄を含んでいるからである。しかし, 修辞学 (残りの四巻の主題)は, 背景として必須のものであり, 従って, 概括的な形で扱われている。モンボドの主要な目的は, イングランドとの合邦以後のスコットランドが直面している言語的, 文化的, 哲学的な諸問題に対する解答を提供することであったこと, そして, 彼の解答は, 「スコットランド啓蒙運動」をその本来の人文主義的諸原理に立ち帰らせることを含んでいた, との主張が提出されている。言い換えれば, ロックとヒュームによって提起された「人間の経験的科学」の代わりに, モンボドは, アリストテレス的な技能の言語の諸原理に基づく人間的科学を提案したのであった。モンボドの哲学的, 言語的, 法学的諸見解は, 完全に首尾一貫している, との主張も提出されている。
著者
伊藤 忠夫 Tadao Itoh 中京大学教養部
出版者
中京大学教養部
雑誌
中京大学教養論叢 = Chukyo University bulletin of the Faculty of Liberal Arts (ISSN:02867982)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.1155-1203, 1996-04-26

言語変化における目的論という古代からの問題は最近, 幾人かの理論家によって改めて提起されており, 歴史言語学に関する多くの会議で議論の焦点となっている。Lass の新実証主義に対する Anttila と Itkonen のような学者の目的論支持の主張は, Peirce の哲学に頼ることによって強化され, より広い視野を得ることができる, というのは, 彼の記号の理論と目的因の独創的概念は, 言語構造と言語変化の目標の本性に直接的に適用されているからである。記号と記号行為の Perice の理解, と同時に Aristotles の文脈における動力因関係と目的因関係についての彼の説明を詳しくたどることを通して, 言語変化の「テロス」'telos' は, 図形化, つまり, 意味の諸関係が形態の諸関係に映される記号行為学的図形の形成, として浮かび上がってくる。目的論は, 従って, 言語構造の本体の不可分の一部として見られる時には, 汎時的な記号行為的全一体としての言語の十分な理解に対する理論的基盤という原理的地位をもっていることが明らかにされている。