著者
上野 宏共 地下 まゆみ 安藤 生大 坂本 尚史 ウエノ ヒロトモ ジゲ マユミ アンドウ タカオ サカモト タカブミ Hirotomo UENO Mayumi JIGE Takao ANDO Takabumi SAKAMOTO
雑誌
千葉科学大学紀要
巻号頁・発行日
vol.3, pp.75-86, 2010-02-28

屏風ヶ浦は太平洋の波により侵蝕された海蝕(かいしょく)崖(がい)であり、1966年に消波ブロックが設置されるまで長年に亘り侵蝕が続いていた。高さは50 mもあり長さは9 kmにおよぶ灰白色の崖は、東洋のド-バ-とも呼ばれている。イギリスとフランスに挟まれるド-バ-海峡のイギリス側の白亜の崖は約1億年前の白亜紀に海底に積もった石灰質化石からできた堆積岩で構成されており、景観としては屏風ヶ浦と似ているが、屏風ヶ浦の正面に露出する100万年程度前の堆積岩とは地質年代が大きく異なる。屏風ヶ浦の飯岡層は珪質シルト岩でド-バ-の石灰質の白亜の崖とは岩質が異なる。 屏風ヶ浦で見える地層は下位から名洗(なあらい)層・飯岡層・香取(かとり)層・関東ロ-ム層である。銚子市名洗町などの東側には粗粒砂岩からなる名洗層が分布する。屏風ヶ浦では名洗層の上部の一部が見えるに過ぎない。名洗層の形成年代は500万年前から200万年前とされている。引き続いて時間間隔を置かずにシルト岩からなる飯岡層が深海底で堆積した。この地層は屏風ヶ浦の崖下3分の2を占める灰白色の岩石であり、わずかながら西に傾斜しているのが層理面などから分かる。化石と古地磁気の結果を総合して、飯岡層の年代は200万年前から70万年前に亘っていることを明らかにした。香取層は不整合に飯岡層を覆う。屏風ヶ浦の東側では名洗層の上に直接香取層が乗る。香取層は黄褐色で厚さ約25 m、下部では細粒砂岩が多いが上部になるにつれて粗粒になり波の作用によって生じたクロスラミナ模様が地層中に残っている。香取層の年代は10万年前と推定されている。関東一円に分布する関東ロ-ム層は銚子地域でも同じで香取層を不整合に覆う。古富士火山や箱根火山からもたらされた火山灰が降下したものが関東ロ-ム層で、厚さは5~6 mでとくに地表部では赤褐色を呈している。飯岡層までは深海底で堆積したが、香取層の頃には古東京湾はしだいに浅海となり陸化した所に関東ローム層の降下火山灰が積もったことになる。 香取層と関東ロ-ム層の境界がはっきりと分からないことが多いが、帯磁率の差によって簡単に識別できることが判明した。また、各地層に含まれる粘土鉱物についてX線回折装置を用いて検討し、興味ある事実を見いだした。