- 著者
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小田原 謡子
Y. Odawara
- 出版者
- 中京大学教養部
- 雑誌
- 中京大学教養論叢 (ISSN:02867982)
- 巻号頁・発行日
- vol.18, no.4, pp.p725-740, 1978
The Faerie Queene を書くにあたって Spenser が用いた方法は, C. S. Lewis の表現を借りるならば, 「アレゴリーの核を各々の巻に置ぎ, まわりをタイプのロマンスと呼ばれるもので囲み, 純粋に架空の逸話をちりばめる^1」というものである。第三巻に於けるアレゴリーの核は, Canto VIのGarden of Adonis と名付けられた豊饒の園であるが, この Garden of Adonis という名称は, Spenser の発案ではない。すでに紀元前700年に最古の記録を持つという Adonis 信仰の祭式の一部として存在したものであった。自然祭祀の一つである Adonis 祭祀に於て「はかない一時の美わしさと, すみやかな荒廃の象徴^2」とされていたGarden of Adonis と同じ名称を持つ Spenser の Garden of Adonis は, 生の豊饒が印象的な園であるが, これは, Adonis 祭祀の遠い記憶とどのような関係にあるものなのか。この園の描写にあらわれている豊饒, 輪廻, 再生の観念, 無常の観念と, Adonis 祭祀の記憶とのかかわりあいをさぐってみたい。