役者絵。3代目歌川豊国画。広岡屋幸助版。歌川派による歌舞伎役者似顔の集大成ともいえるシリーズ。文久2年(1862)から3年にかけて刊行。101枚揃い。元禄歌舞伎の時代以降の歌舞伎役者約300人を、家系や一門の系譜順に似顔で描いているので、江戸時代の代表的な歌舞伎役者の典型的な似顔表現を知ることができる。役者の選択にあたっては、江戸歌舞伎と上方歌舞伎で比較すると、前者に比重があることは否めないが、上方歌舞伎役者にも幅広く視野を放っていることは特筆される。元禄時代など、似顔表現が定着していない時代の役者の顔については、同時代あるいは後世の図像を粉本としているものと思われる。役者絵研究会編『増補古今俳優似顔大全』(早稲田大学坪内博士記念演劇博物館、1998年)に、扉・目録・本体・跋を完備した安田文庫本(早稲田大学坪内博士記念演劇博物館所蔵)が復刻されており、「粉本一覧稿」が併載されている。この推定によれば、『役者舞台扇』に始まる役者絵本の数々のほか、初代豊国の役者絵なども粉本とされたようである。(児玉竜一)(2017.2)

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