- 著者
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曲直瀬道三
- 出版者
- 刊
書名は目録首による。川瀬一馬氏の『増補古活字之研究』によれば、坊刻の医書のうち無刊記本は数多く刊行されており、本書もそのうちのひとつであるという。国書総目録は本書を『医学指南篇』として掲げ、「医学十五指南」「十五指南」「医工指南」等の別書名を列記している。著者は曲直瀬正慶(初世道三)で、元亀2(1571)年の成立としており、自筆の写本を宮内庁書陵部が所蔵していると記している。川瀬氏は前掲書中で本書の著者及び刊行者には言及せず、ただ慶長から寛永に亘る医書類の活字開版の初期における医師の活動には目覚ましいものがあったこと、医書の類は朝鮮本の翻刻が多いこと、唐土の刻本の翻刻はほとんどが明刊本に基づいていること等を記するに止めている。本書は、無刊記本であるが慶長年間に刊行されたと推される古活字版で、当館本には、全巻に朱点・朱引き、欄外・行間への朱と墨での書き入れ、墨での返り点・送り仮名の付与等がみられる。大阪毎日新聞社専務取締役で古書蒐集家としても知られた高木利太(1871-1933)の旧蔵書。