- 出版者
- 沙弥實阿 [写]
- 巻号頁・発行日
- 1413
宴曲は中世に歌われた歌謡で、当時は「早歌(そうか)」と称された。173曲が知られ、多くは和漢の古典や仏典、寺社の霊験譚に素材を求める。大部分は鎌倉末期に明空という僧侶が作詞、作曲しており、他の作者には公家、僧侶、武家が含まれるが、鎌倉に関係ある人物が多い。本書に収められた12曲は、明空が編集した『宴曲集』など他の選集にみられず、貴重な資料である。「小林訣」のみは、禅宗に深く帰依した武士小串範秀(雲岸居士。1339没)の作と判明している。綴葉装(列帖装)、厚手の鳥の子紙に両面書写。巻頭には「外物」とのみあり、書名は帙題簽による。「外物」の称は、明空の集成後に追補された意かとされる。本文右側に墨譜と朱書の拍子詞、左側に振り仮名があり、巻末に応永20年(1413)実阿の奥書がある。実阿(蔭山入道)は、応永15年3月に将軍足利義満の北山殿に後小松天皇の行幸があった際、早歌実演のため召された「好士五人」の中にも見え(『教言卿記』)、当時の名人だったらしい。なお、宴曲48曲を収めた『撰要両曲巻』にも、本書と同文、同年月日の実阿奥書が記された写本がある。また、末丁裏に明和3年(1766)追記をした岩井直恒は、寛政4年(1792)に宴曲歌詞集『拾菓集』上巻(北海道大学附属図書館所蔵)を補写したことが知られる。