- 出版者
- 藤井五兵衛
- 巻号頁・発行日
- 1667
室町物語。寛文7年(1667)藤井五兵衛刊。青葉の笛の由来譚で、法華経の功徳を称えた作品。仁明天皇の御時、内裏近くで、夜な夜な妙(たえ)なる笛の音が聞こえるので、帝は業平にその者を具し来るよう命じた。業平はある夜稚児に行き会い、稚児は法華経の功徳を説き、明晩の再会を約して別れる。翌晩稚児に誘われ、箕面の奥山を分け入り、荘麗な宮殿に通され、馳走を受けながら稚児の話を聞く。稚児は11歳の時から父母の菩提を弔って法華経を読誦し、14歳の折、八十ばかりの老僧に導かれ、観音の浄土に至り不死の寿を得た。稚児が都に通い来たのも業平の法華経帰依を賞するためであった。稚児は業平の現世での徳を願って、帝への土産に青葉の笛を託し、業平が琵琶、稚児が琴を弾くと天人が天下って舞いを舞った。持仏堂の釈迦三尊を拝み、稚児は机に向かい経を誦み、兜卒天で会うことを約して別れた。笛を帝に献じ、帝の命で再度仙家を訪れようとしたが果たせなかった。当館本は屋代弘賢、蜂須賀家の旧蔵本。第4丁が落丁。当館蔵の奈良絵本「仁明天皇物語」1冊(当館請求記号:丑-7)と同内容だが、表現は異なる。(岡雅彦)