- 著者
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靜照 述
- 巻号頁・発行日
- 1300
無象静照撰。天台宗と禅宗との宗論。文永年間(1264-75)に、叡山の衆徒等が禅宗の興隆を妬んで誹謗し、朝廷に上書して禅宗の排斥を企てたのに対して、静照(1234-1306)が駁論したものである。静照は鎌倉の人で、東福寺の聖一国師に侍し、建長4(1253)年に渡宋して石渓心月の法を嗣ぎ、文永2(1265)年に帰国。正安元(1299)年、北条貞時に招かれて鎌倉浄智寺の開山となった。勅諡は法海禅師。川瀬一馬著『五山版の研究』によれば、本書は無刊記であるが南北朝初期の開版と推定され、当館本が現在唯一の伝本であるという。本書巻末には「幹縁比丘 瑞川」と附刻されているが、瑞川の伝は未詳。補刻の痕の見られる後印本で、書中全巻に朱点・朱引きが施されている。明治時代の蒐書家寺田望南の印記「讀杜⁄艸堂」が押捺されている。