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安珍・清姫で知られる紀州・道成寺の縁起の異本。三井寺の僧賢学は清水寺で遠江国橋本の長者の娘と出会い、契りを結ぶ。娘の胸の傷跡から、賢学はかつて仏道修行の妨げになるため殺めた因縁の相手と知り、女を捨て熊野詣でに旅立つ。賢学を追いかけ、想いのあまり大蛇と化した女は鐘の中に隠れた賢学を巻きつけ、紀州の日高川へと沈んでいったとする。「賢学の草子」「日高川」とも称され、根津美術館、天理図書館に室町後期から江戸初期の写本が伝わる。掲出本は冒頭部分を欠く酒井家旧蔵『賢学草紙』(室町後期写、小絵)を江戸後期に模写したもの。同様の模写本が西尾市岩瀬文庫や早稲田大学図書館などにも伝存する。(恋田知子)(2018.11)