著者
千葉 正司 チバ ショウジ Chiba Shoji
出版者
弘前大学医学部
巻号頁・発行日
1992-03

1.解剖実習体224体448側において、仙骨神経叢の枝が梨状筋を貫通、もしくは梨状筋上孔を通る異常は合計178側(40%)、梨状筋と中殿筋の移行筋束は9側(2%)、M.tenuissimusは3側(0.7%)に出現した。2.仙骨神経叢各枝と梨状筋の位置的関係は、I型~XIII型の13系32群に分類できる。梨状筋を神経が貫通しないI型(正常例)は270側(60%)、下殿神経の一部が貫通するIII型は10側、下殿神経と後大腿皮神経の一部が貫通するIV型は6側、下殿神経と総腓骨神経が貫通するV型は47例(10%)、下殿・後大腿皮・総腓骨の3神経がともに貫通するVI型~IX型は合計99側(22%)、3神経のほかに脛骨神経も貫通すると考えられるX型は4例、梨状筋上孔を神経が通過するXI型~XIII型は合計9例(2%)、に認めた。貫通するものの分類不能が3例ある。II型は、上殿神経の一部が梨状筋を貫通する場合で、これは上記のいずれの型にも合併して出現した。従来の浦(1962)、山田・萬年(1985)の分類によると、今回の全調査例の80%しか捕捉できないことが判明した。また、個々の神経の全成分が、単独で梨状筋を貫通する場合は1例も存在しなかった。3.仙骨神経叢の梨状筋貫通現象は、助骨弓の形態、第12助骨の長さ、仙前椎の構成、岬角の形態、分岐神経の形態、仙腸関節の高さ、ヤコビ-線の高さ、梨状筋の起始高、などに見られる位置的変動(ズレ)との間に、有意な相関を示さなかった。それゆえ、梨状筋貫通は、脊柱・腰仙骨神経叢・下肢帯などの変動とは独立した現象であることが示唆された。この点は、梨状筋の筋構築と支配神経の観点から精査する必要がある。4.線維解析によると、仙骨神経叢の背側面では、背側から下殿神経、総腓骨神経、後大腿皮神経の順に層構築を形成するものの、それらの起始は完全に分離することなく互いに線維連絡を有することが明らかにされた。

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