著者
岸 靖亮
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.114, pp.21-39, 2011-12-27

高度な社会的行動である欺きを遂行するには,高い知性に基づく複雑な情報処理が要求される。本論文では,欺きとは何か,どのような精神活動や脳機能が必要とされるのかについて検討した。霊長類研究や発達心理学研究の知見を基に,欺きに必要とされる高い知性とは何か,進化論的ないし認知発達論的な観点からこれを解説した。さらに,欺きの手法の1 つである嘘について,その神経基盤を研究した知見から,嘘と前頭前野の関わり,欺こうとする意図と「心の理論」との密接な繋がりに関する報告をまとめた。これらの知見に基づき,ポリグラフ検査の研究から,嘘をつくときの自律神経系活動と脳活動の関係性について,事象関連脳電位を用いた実験を行なった。また,ポリグラフ検査における実験パラダイムを応用し,自身がついた嘘に対する認知活動についての検討を行った。結果として,嘘をつくときの脳活動は,欺きを成功させるための生体制御を担うこと,自身がついた嘘を重要な情報として処理する可能性が示唆された。

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