- 著者
-
工藤 一嘉
坂上 実
- 出版者
- 東京大学地震研究所
- 雑誌
- 東京大學地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.2, pp.361-382, 1984-10-20
1983年日本海中部地震の発生に伴ない,震央から270kmも離れた新潟県下の大型石油タンクから石油が溢流した.地震により石油が溢流することは,石油コンビナートの耐震安全性を考える上で極めて重要な問題であり,盗流の原因となったスロッシングの発生状況,地震動の特徴について検討した.新潟における本震の地震観測記録類には,それぞれ欠陥があり,正確な地震動を把握できなかったが,以下のような特徴が見い出された.1.溢流の生じたタンクのスロッシング周期,8~11秒における速度応答は少なくとも100cm/sec以上で200cm/secは超えない.2.最大地動変位は10cmから20cmの間である.3.長周期で大振幅の地動変位は,表面波としての特徴を有し,新潟における厚い堆積層による増幅を受けた結果である.スロッシングに対する基本的理解は,新潟のデータを大勢としては説明するが,スロッシングが異常に大きい例もあり,基木的理解に検討を加える余地が残されている.溢流を発生させないために設定されている入力地震動レベル(速度応答=100cm/sec)は,全国平均で見れば相当安全側に考慮されていると言える.しかし新潟の事例から,地域性を含めたより詳細な規準値の設定が要請される.