著者
羽鳥 徳太郎
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.97-104, 1985-09-05

小笠原父島における津波記録を収集し,その挙動を考察した.二見港の奥村では,1854年安政東海津波で集落の大部分が流失し,津波の高さは3~4mに達したとみなされる.また,1918年ウルップ(南千島)津波で全振幅2.7mを記録し,19戸が浸水被害を受けた.津波マグニチュード判定図によれば,父島ではフィリピン・ハワイなど南西・南東方向から入射する津波に対して,標準的な振幅で観測されている.しかし,日本近海でおきた津波では,いずれも顕著な波高になり,平均津波マグニチュードより1~1.5階級の偏差(エネルギーで5倍,波高にして2.3倍以上)がある.その要因のひとつとして,小笠原諸島は屈折効果で,津波エルギーが集まることが津波伝播図から認められた.東海地域の津波に対しては,さらに津波の指向性を強く受ける方向にあり,将来の東海地震においては津波に十分な警戒が必要である.

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