- 著者
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池原 悟
- 雑誌
- 情報処理学会研究報告情報学基礎(FI)
- 巻号頁・発行日
- vol.1992, no.87(1992-FI-028), pp.31-40, 1992-11-09
最近、自然言語処理においては、意味処理、意味解析、意味理解などに関する研究が盛んであるが、意味そのものについて、考察や議論を提起した研究はまれである。自然言語処理は社会的産物である自然言語が研究対象であるため、従来の自然科学と異なる困難さがあり、統一的な見解が得られない状況にあるが、意味処理の研究を促進するには、常識的な感覚に頼るだけでなく、言語表現の意味について言語処理の観点からあらためて考察を加え、定義を明確にして研究することが望まれる。本稿では、言語過程説の立場から、従来の言語哲学の分野での議論を振り返り、言語表現の意味とその処理について考察する。具体的には、言語表現には、対象の姿とそれに対する話者の認識が対応づけられていることに着目して、「対象」と「認識」「表現」の3者の関係を意味と考える。そして「意味処理」を、表現に使用された言語上の約束を特定するための「意味解析」と、言語表現と対象世界の対応付けを行う「意味理解」の二つの過程に分けることを提案する。また、この内の「意味解析」の例として、日英機械翻訳システムALT?J/Eの翻訳方式と意味辞書の関係について紹介する。