著者
津崎 実
雑誌
研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:21888663)
巻号頁・発行日
vol.2018-SLP-122, no.12, pp.1-6, 2018-06-09

ピッチは音の重要な知覚属性であり,ヒトがどのようにしてピッチを知覚するかに関するモデルについては古くから研究がされている.ピッチ現象を説明するための聴覚理論として有名な場所説と時間説の間の論争は 19 世紀に今日の原形が形成され,その後修正を加えながら,今日でも引き継がれてきている.時間説の流れを汲む近年の機能モデルでは基底膜フィルターバンク処理と半波整流の後段に自己相関演算による周期性検出を想定するものが多い.著者の研究グループでは,加齢に伴う絶対音感判断の上方へのシフトという現象をここ数年研究してきている.この現象は知覚レベルでのピッチが加齢に伴って変容する可能性を強く示唆する.ピッチが音響信号に備わる周期性に基づいた知覚属性であることは否定しがたいが,単にその周期性を時間の関数としての自己相関演算で求める以上,このような加齢効果が入り込む余地はない.加齢効果を説明するためには自励発振する内部参照を想定し,その自励発振周波数が加齢によって変化することを想定する必要がある.発振回路を使用したピッチ検出機構の提唱は先例があるものの,従来はその想定を必要とする現象が観察されずに来た.加齢性のピッチ ・ シフト現象はピッチ知覚に関する研究に新たな局面を切り開く可能性がある.

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津崎実.「加齢によるピッチシフト現象とピッチ・モデル-内部参照の必要性-」.情報処理学会. https://t.co/0n0rgrHJ4m

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