著者
村上 司樹
雑誌
摂大人文科学 = The Setsudai Review of Humanities and Social Sciences (ISSN:13419315)
巻号頁・発行日
no.22, pp.141-160, 2015-01

古典的通説ではカロリング期以降いわゆるグレゴリウス改革以前(10-11世紀半ば)のカタルーニャ(現スペイン北東部)は、ラテン・キリスト教世界全域でも教会腐敗が特に著しかった地域、旧態依然たる在地社会の典型とされてきた。教会史研究のみならず封建社会成立論や、その特異な史料状況とも複雑に絡まりあった伝統的理解は、しかし最近30 年間の研究の進展によって大幅に書き換えられている。それを後押ししたのは、現地カタルーニャにおける史料刊行と個別所見の蓄積であると同時に、研究のさらなる国際化にともなう視野の拡大および方法の多様化であった。筆者は以前本誌において、主として律修教会(修道院)に即しつつ、中世カタルーニャ教会史研究のこのような現状を概観した1。今回はもう一方の在俗教会(主に司教座教会)に焦点を当て、司教区単位で深化している最近30 年間の研究動向を整理するとともに、旧稿では保留にした領邦政治との関係や聖堂参事会改革をめぐる議論の革新にもふれたい。

言及状況

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グレゴリウス改革前夜のカタルーニャ司教と司教座教会(1) ― 最近 30 年間の研究史から ― https://t.co/RYV8Dmzgfs

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