- 出版者
- 福島県畜産試験場
- 雑誌
- 福島県畜産試験場研究報告 (ISSN:03876888)
- 巻号頁・発行日
- no.12, pp.72-79, 2004-12
耕作放棄地を放牧利用する場合、家畜の飲水確保が困難な所が多く、水源の確保が障害となりやすい。そこで、草地試験場山地支場(現畜産草地研究所山地畜産研究部)で開発した方式を参考として、放牧家畜の飲水を確保するため天水利用施設の造成・管理方法を検討した。1 施設の概要 傾斜地に広げたシートや家畜管理舎等の屋根を用い、雨水を擂鉢状に掘り下げた貯水槽に集水する。貯水槽は遮光して水質を保持し、貯水槽から給水所までは落差利用の配管する。2 施設の設計方法 施設の規模は月間平均降水量および放牧頭数によって設定する。例えば月間平均降水量125mmの福島市の場合、成牛10頭に1か月分の給水が可能な施設は次のように設計する。(1)貯水量=頭数×1日飲水量×30日×予備量=10頭×30L×30日×1.4=約13,000L (2)集水面積=貯水量/放牧期の月間平均降水量=13,000L/125mm=約100m2 3 貯水・集水シートの選択 可塑剤を含有しない不透明シート(酢酸ビニルエチレン共重合フィルム)が施設の造成に適しており、貯水用には0.45mm、集水用には0.32mm厚のシートが軽量で表面の摩擦力があり、傾斜地での作業安全面で問題がない。 4 造成コスト 施設造成にかかる費用合計は、10頭規模の施設が365,747円、5頭規模の施設が181,411円であった。施設の使用可能年数を5年と想定すると、1頭当たりの単年度費用負担額は、それぞれ7,315円および7,256円であった。