雑誌
福井県畜産試験場研究報告 (ISSN:03893537)
巻号頁・発行日
no.21, pp.16-20, 2008-03

体細胞数低減対策を確立するために、その増加要因である乳房炎の発生機序の解明が求められている。そこで、酪農の現場で得られた高体細胞乳中の細胞を使って、炎症反応に深く関わっているとされる炎症性サイトカインの遺伝子発現を調べる基礎的実験を行った。炎症性サイトカインのうち、乳房への感染実験により遺伝子発現が確認されているインターロイキン(以下「IL」)-6、IL-8、IL-12、顆粒球・単球コロニー刺激因子(以下「GM-CSF」)、腫瘍壊死因子(以下、「TNF-α」)およびインターフェロン-γ(以下「INF-γ」)について、体細胞からmRNAを抽出し、DNAに逆転写(reverse transcription:以下「RT」)したうえで、ポリメラーゼ連鎖反応(以下「PCR法」)を行い、それぞれの遺伝子発現を調べた。その結果、IL-8については、全ての検体で遺伝子発現していて、IL-6およびINF-γについては一部の検体で遺伝子発現していた。酪農の現場で見られる慢性化した潜在性乳房炎においては、感染初期の臨床事例と同等と思われるこれまでに報告されている感染実験とは違った遺伝子発現の特徴があることが示唆された。