著者
堀 令司 岩松 鷹司
出版者
大垣女子短期大学
雑誌
大垣女子短期大学研究紀要 (ISSN:13420186)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.1-6, 1996-03-20

メダカ亜目,メダカ科,メダカ属に分類される魚類は,現在,北は朝鮮半島,日本列島から中国沿岸,フィリピン,タイ,マレイシア半島,インドネシア諸島,ミャンマー,インドならびにパキスタンに至るまで1属14種が広く分布している。これらメダカ属の魚類は小型の淡水魚であるが,汽水や海水に棲むものもある。この魚類が古第三紀,あるいはそれ以降に出現したとすれば,近接するオーストラリア大陸まで広がっていないことから考えると,広域の海洋で出現し各沿岸にたどり着いたと考えるよりは,どこか比較的塩類濃度の低い汽水域か,雨季に淡水で希釈された近海で出現し,大陸の沿岸を伝って広がったと考える方が理解しやすい。これらの種は,今日まで骨格構造を中心とした形態学的相違にもとずいて分類されている。(Iwamatsu and Hirata, 1980)。たとえば,インドメダカは,ニホンメダカよりも構造的にはジャワメダカには近く,ジャワメダカはニホンメダカよりもフィリピンメダカに似た構造を持っている。しかし,この魚の種分化は,必ずしも形態変化や地理的分布ばかりでなく,他の要因も考慮する必要があると思われる。本実験の目的は,インドメダカ,ジャワメダカ,ならびにニホンメダカの3種間において人工受精による異種間交雑を行い,それら雑種の発生から類縁関係を明らかにしようと試みた。インドメダカとジャワメダカの雑種は,正常に発生し,ほとんどの稚魚はふ化した。インドメダカとニホンメダカ,ジャワメダカとニホンメダカのコンビネーションでは,眼胞形成期まで発生するものがあったが,ふ化したものは一個体もなかった。遺伝子の発現が始まると思われるのう胚期以後は,波状形の胚体,小眼胞をもった異常胚が見られ,ふ化までにはすべて発生を停止した。この実験から,ニホンメダカはインドメダカ,ジャワメダカよりは,系統的にはかなり離れているように思われる。