著者
久保田 健夫
出版者
聖徳大学
雑誌
児童学研究 : 聖徳大学児童学研究所紀要 = CHILD STUDIES : Journal of the Institute for Child Studies, Seitoku University (ISSN:13442732)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.51-59, 2020-03

全国的に発達障害児が急増し専門医療機関では予約が殺到している。その結果,診療まで2年待ちの病院もあると言う。一方,発達障害傾向を認める子どもには,養育・保育環境を整え,その子に必要な手立てを行うことが,2次障害を防ぎ,情緒や行動を落ち着かせ,脳を活性化させることが,教育現場でも実践研究や基礎生物学的実験から示されてきた。このような背景の下,昨年,児童学研究所の中に,本学の児童学科・心理学科・短期大学部の教員によって構成される「発達支援研究部門」が発足した。本部門では,発足後1年半,臨床心理士と医師の教員がペアを組んで県内の幼稚園,小学校,中学校を訪問し,発達障害傾向を認める子どもたちに関わる担任や保護者の困りごとを聞きとり,心理学的・医学的な立場からの助言を行うアウトリーチ活動を行ってきた。また担当教員は活動を通じて得られた経験を学生や大学院生の教育に,教科書には書いていない生きた情報として還元してきた。今後は発達障害児に対する栄養療法・音楽療法・運動療法にご関心がある先生方にもご参画いただき,オール聖徳・多職種協働体制の下で,学際的な視点で支援を行なっていきたいと考えている。以上の経緯をふまえ,本稿では本部門創設の科学的基盤ともなる,100余年前にイタリアの女医モンテッソーリが創設した教育観に対する最新の生物学知見からの解釈を記した。