著者
藤埜 浩一
出版者
公益社団法人日本放射線技術学会
雑誌
核医学分科会誌 (ISSN:13453203)
巻号頁・発行日
no.46, 2003-04-01

これまでFDG-PET検査は厚生労働省認可の下、一部の施設で高度先進医療として行われてきましたが、平成14年4月1日に健康保険の適用を受けることになりました。また、適用を受けるための施設基準が設けられ「専任の放射線技師が1名以上いなければならない。」となっていることは既にご存知のとおりです。これは我々放射線技師にとって追い風ではあるが、果たすべき責任がそれだけ重くなったと言うことではないでしょうか。近年、新たにPETを導入する施設が急増しており、今後PET診療に携わる放射線技師も飛躍的に増加していくことが予想されます。今、この時期にPET検査の特殊性を考慮し放射線技師に求められている役割について考えることは、将来に向けての良い機会だと思います。まずPET施設が他の核医学施設と大きく異なるところは、サイクロトロンや薬剤合成装置により放射性核種や放射性薬品を製造しているということです。当然それらの放射線管理が求められ、放射線技師が施設管理の役割を担うのはごく自然なことと思われます。次にPET装置はガンマカメラと比べ構造も複雑で装備されている密封放射性線源や非密封放射線源を使用してキャリブレーションを行う必要があります。このような装置の適正な保守管理が検査精度の維持に敏感に反映されるのも事実です。サイクロトロンを含めたこれら大型機器の保守管理は、放射線技師に求められる役割の中でも最も重大な部分と考えています。また、FDG-PET検査を例にあげると、FDG-PET検査は健康保険に適用されて以降、検査件数は著しい増加傾向を示しています。おそらく現状のPET施設では過密な検査スケジュールを強いられていることでしょう。我々が日常のFDG-PET検査を行っていく上で問題となってくるのは、まず適正な放射性薬剤が適量分製造されるか否か確約されていない点です。他の核医学検査はこれまでの実績から検査前には放射性薬剤が必ず存在します。しかしPET検査では施設内で核種の製造から始めるために放射性薬剤の合成が大幅に遅れるケースや失敗するケースも稀にあると言うことを十分認識しておかなければなりません。そのため検査業務が円滑に遂行できるよう核種の製造から全ての検査終了までの状況を把握し、運営と管理を行う必要が生じてきます。この役割には最も患者さんに近い立場にいる我々放射線技師が適任と考えており、こうした不測の事態にすばやく対応していかなければなりません。そのためには従事者間の密接な情報交換が必要不可欠となり、薬剤が出来上がるのを待つだけではこの事態に対応することは非常に困難です。そのため、放射性核種がターゲットから回収された段階から検定終了に至るまで、ある段階ごとに予測収量を推定できるよう勤めトラブルの影響をいち早く検査プロトコールにフィードバックさせることもこれからは放射線技師の重要な役割になってくると感じています。PET検査の技術的諸問題については、そのほとんどがガンマカメラと重複しますが、PET特有の問題としては、装置の構造上多くの検出器を装備しているために生じるトラブルとTransmissionに関する問題があります。また画像再構成法の進化に件い設定パラメータが多様化しています。これら画像再構成パラメータの適正化も現在大きな問題となっています。