著者
谷川 千佳子 大友 光恵
出版者
聖徳大学
雑誌
看護学ジャーナル = Journal of the Institute Nursing Science Seitoku University (ISSN:2435354X)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.5-15, 2022

【目的】訪問看護ステーション(以下ST)の運営と労務管理に関する過去10 年の原著論文を概観し研究の動向を把握する。【方法】医学中央雑誌web を用いて「訪問看護AND(労働OR 労務OR ワークOR 運営OR 経営)」で検索した。包含基準(日本のST、原著、抄録あり、全文入手可、シソーラス用語に上記語句を含む、過去10 年分)と除外基準(会議録、検索語「ワーク」を意味しない語句、訪問看護でない)を満たす論文を対象とし、①研究デザイン、②発刊年と件数、③研究対象、④研究内容のカテゴリー化から分析した。【結果】43 編を採択論文とした。①分析的観察研究36 編(縦断研究1編、横断研究24 編、記述的研究11 編)、その他7編(尺度開発研究2編、統計データ解釈1編、文献検討4編)だった。記述的研究が相対的に少なくその分析は記述のコード化に偏っていた。②・③分析的観察研究36 編の研究対象者には「管理者」「看護師」「管理者と看護師双方」「利用者」があり2010 年代後半以降管理者対象の研究が増加していた。④研究内容は【経営管理】【人事管理】【労務管理】【労働問題】【働き方】【労働市場】に類型された。【結論】【経営管理】は14 編と最多で起業、経営管理行動や経営能力、悩み、困難感などステーション運営上の切実な課題が研究されていた。この10 年間にST 数は2倍に増加しており競合する事業所も増加した状況にある。訪問看護には市場競争と労働市場において二重に不利な状況にあると推察する。ST の運営と労務管理についての「経験」を、「構造」と「過程」、「実存性」と「理念性」の軸を掛け合わせて記述する研究の豊富化が必要である。地域包括ケアシステム構築推進、訪問看護事業の社会的期待が一層高まる現下にあって、学際的な視点からの研究が一層望まれる。